神式葬儀とは?仏式との違いを理解する
神道における「死」の捉え方
神道では、死は「穢れ(けがれ)」と捉えられます。しかし、これは不浄という意味ではなく、日常から離れた「非日常」の状態を指します。故人は「祖霊(それい)」となり、子孫を見守る存在として家にとどまると考えられています。そのため、神式葬儀は、故人を清め、祖霊として祀り、子孫の繁栄を願う儀式なのです。
仏式葬儀との決定的な違い
仏式葬儀が故人の冥福を祈り、あの世への旅立ちを見送るのに対し、神式葬儀は故人が家の守り神となることを目的とします。
戒名やお焼香、数珠といった仏式特有の要素は神式葬儀にはありません。代わりに、玉串奉奠(たまぐしほうてん)や柏手(かしわで)、祝詞(のりと)などが用いられます。
神式葬儀はどこで行われる?主な斎場と特徴
自宅での葬儀:家族葬としての選択肢
かつては自宅で葬儀を行うのが一般的でした。神式葬儀においても、故人が生前過ごした自宅で、家族や親しい方々に見守られながら執り行うことができます。アットホームな雰囲気で故人を偲びたい、という方には適した選択肢です。ただし、スペースの確保や準備の手間がかかる点は考慮が必要です。
斎場・葬儀会館:現代の主流
現代において、神式葬儀の多くは斎場や葬儀会館で執り行われます。これらの施設は、儀式に必要な設備が整っており、専門のスタッフが準備から進行までサポートしてくれるため、遺族の負担を軽減できます。神式に対応した祭壇や控え室も完備されていることがほとんどです。
神社での葬儀は可能?特別なケース
原則として、神社で葬儀を行うことは稀です。神道では「死」を穢れと捉えるため、清浄な場所である神社で葬儀を執り行うことは避けるのが一般的です。ただし、一部の大きな神社や、特別な許可を得た場合に限り、葬儀殿が併設されている場所で執り行われることもあります。基本的には斎場や葬儀会館が選択されます。
参列者が知るべき神式葬儀の流れと儀式
【通夜祭】故人を偲ぶ夜の儀式
通夜祭は、仏式の通夜にあたる儀式です。故人の御霊(みたま)を慰め、安らかな眠りを祈ります。
主な流れは以下の通りです。
- 手水の儀(てみずのぎ):参列者が身を清めます。
- 開式の辞:儀式が始まります。
- 献饌(けんせん):神様にお供え物をします。
- 祝詞奏上(のりとそうじょう):祭主が故人の生前の功績をたたえ、安らかな眠りを祈る言葉を読み上げます。
- 玉串奉奠(たまぐしほうてん):参列者が玉串を奉納します。
- 撤饌(てっせん):お供え物を下げます。
- 閉式の辞:通夜祭が終了します。
【葬場祭】故人を送る本儀
葬場祭は、仏式の告別式にあたる、神式葬儀の中心となる儀式です。故人の御霊を霊璽(れいじ)に移し、祖霊として祀るための重要な儀式です。
主な流れは以下の通りです。
- 手水の儀
- 斎主(さいしゅ)入場
- 献饌
- 祝詞奏上
- 誄歌奏上(るいかそうじょう):故人の生前の功績をたたえる歌が奏でられます。
- 玉串奉奠:参列者が玉串を奉納します。
- 弔電奉読(ちょうでんほうどく):弔電が読み上げられます。
- 閉式の辞
【直会(なおらい)】故人との最後の食事
直会は、仏式の精進落としにあたるものです。葬儀を無事に終えたことを神様に報告し、神様からのお供え物をいただくことで、故人との最後の食事を共にするという意味合いがあります。参列者への感謝の気持ちも込められています。
【帰家祭】自宅に戻る儀式
葬儀後、自宅に戻った際に行われる儀式です。故人の霊璽を霊舎(みたまや)に安置し、祖霊として家にとどまってもらうための儀式です。
神式葬儀の参列マナー:服装・香典・玉串奉奠
【服装】喪服が基本!小物にも注意
神式葬儀の服装は、基本的に仏式葬儀と同じく喪服を着用します。
- 男性:ブラックスーツ(シングルまたはダブル)、白無地のワイシャツ、黒無地のネクタイ、黒の靴下、黒の革靴。
- 女性:黒無地のアンサンブル、ワンピース、スーツなど。ストッキングは黒、靴は黒のパンプス。アクセサリーは結婚指輪以外は控えるか、真珠の一連ネックレスのみ。
- 子供:制服があれば制服、なければ地味な色の服装。
派手な装飾品や光沢のある素材は避けましょう。
【香典】「玉串料」または「御榊料」の表書きと相場
神式葬儀では、香典ではなく「玉串料(たまぐしりょう)」または「御榊料(おさかきりょう)」としてお金を包みます。
- 表書き:「玉串料」または「御榊料」と書きます。薄墨で書くのがマナーです。
- 水引:黒白または双銀の結び切りを選びます。
- 相場:故人との関係性によって異なりますが、一般的には仏式の香典と同程度と考えて良いでしょう。
- 友人・知人:5,000円~10,000円
- 親族:10,000円~50,000円(関係性による)
新札は避け、古いお札を使用するか、一度折り目をつけてから包むのがマナーです。
【玉串奉奠(たまぐしほうてん)】作法と意味を理解する
玉串奉奠は、仏式の焼香にあたる、神式葬儀で最も重要な儀式の一つです。玉串とは、榊(さかき)の枝に紙垂(しで)を付けたものです。
作法は以下の通りです。
- 神職から玉串を受け取ります。右手で根元を上から、左手で葉先を下から支えます。
- 玉串を胸の高さに持ち、祭壇に進みます。
- 玉串を時計回りに90度回し、葉先が手前、根元が祭壇に向くように持ち替えます。
- 玉串をさらに時計回りに180度回し、葉先が祭壇、根元が手前になるように持ち替えます。
- 玉串を祭壇に供えます。
- 二礼二拍手一礼(しのび手)を行います。
- 二礼:深く二回お辞儀をします。
- 二拍手:音を立てずに二回手を叩きます(しのび手)。
- 一礼:深く一回お辞儀をします。
- 遺族に一礼し、自席に戻ります。
「しのび手」は、神社の参拝時とは異なり、音を立てずに手を叩くのが特徴です。
【言葉遣い】忌み言葉を避ける
神式葬儀においても、仏式と同様に忌み言葉を避けるのがマナーです。
- 「重ね重ね」「度々」「追って」など、不幸が重なることを連想させる言葉
- 「死亡」「死去」ではなく「ご逝去」「ご永眠」など、婉曲的な表現を用いる
- 「ご冥福をお祈りします」は仏教用語なので使わない。代わりに「安らかなお眠りをお祈りいたします」などが適切です。
遺族への慰めの言葉は「この度は誠にご愁傷様でございます」が一般的です。
神式葬儀でよくある疑問Q&A
数珠は必要?
神式葬儀では、数珠は必要ありません。数珠は仏教の法具であり、神道には関係がないため持参しないようにしましょう。
焼香の代わりに何をする?
焼香の代わりに、前述の玉串奉奠(たまぐしほうてん)を行います。作法を事前に確認しておくと安心です。
お供え物のマナーは?
神式葬儀では、故人が好んだものや、神様へのお供えとしてお酒、米、魚、野菜、果物などが供えられます。供物料として現金を包む場合は「御供物料」とします。仏式でよく見られる線香やろうそくは供えません。
まとめ:神式葬儀への理解を深め、故人を敬う心で参列を
神式葬儀は、仏式葬儀とは異なる独特の儀式やマナーがあります。しかし、その根底にあるのは、故人を敬い、遺族に寄り添うという大切な心です。
本記事で解説した場所、流れ、服装、香典、玉串奉奠などの知識を身につけることで、自信を持って神式葬儀に参列できるでしょう。故人への感謝と、遺族への配慮の気持ちを忘れずに、心を込めてお見送りください。
