家族が知りたい最期の兆候:呼吸・意識・血圧の変化

家族が知りたい最期の兆候 危篤・臨終

1.危篤とは?知っておくべき基礎知識

1-1.危篤の定義と宣告のタイミング

危篤とは、病気や事故などによって生命の危機が迫っている状態を指します。医師が「回復の見込みがない」と判断した場合に、家族へ危篤が宣告されます。宣告のタイミングは、患者さんの状態によって異なりますが、医師により総合的に判断され、一般的には、積極的な治療の効果が期待できず、生命維持が困難になった時です。突然の宣告に動揺することもあるかもしれませんが、まずは落ち着いて医師の説明をよく聞き、今後の対応について話し合いましょう。

1-2.なぜ危篤状態になるのか?主な原因とメカニズム

危篤状態になる原因は様々ですが、主なものとしては、重症感染症、心不全、呼吸不全、脳卒中、がんの末期などがあります。これらの疾患によって、体の重要な機能が著しく低下し、生命維持が困難になるためです。例えば、心不全の場合、心臓が全身に血液を送るポンプとしての機能を十分に果たせなくなり、各臓器への酸素供給が滞ります。また、呼吸不全では、肺が酸素を取り込み、二酸化炭素を排出する機能が低下し、体内の酸素不足と二酸化炭素の蓄積が起こります。これらの状態が複合的に重なることで、危篤状態へと進んでいきます。

2.危篤時の身体的サイン:呼吸の変化

2-1.呼吸の変化の種類:チェーンストークス呼吸、下顎呼吸、喘鳴など

危篤時には、呼吸に様々な変化が見られます。代表的なものとして、チェーンストークス呼吸、下顎呼吸、喘鳴などが挙げられます。

  • チェーンストークス呼吸:深く速い呼吸と、呼吸が止まる無呼吸の状態が交互に繰り返される呼吸。脳の呼吸中枢の機能低下が原因となることが多いです。
  • 下顎呼吸:下顎が上下に大きく動き、あえぐような呼吸。呼吸筋の力が弱まっている状態を示します。
  • 喘鳴:呼吸時に「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった音がする呼吸。気道が狭くなっている状態を示し、痰が詰まっている場合などに見られます。

2-2.それぞれの呼吸の変化が意味するもの

それぞれの呼吸の変化は、体の状態を表す重要なサインです。

  • チェーンストークス呼吸は、脳機能の低下や心不全、腎不全などが疑われます。
  • 下顎呼吸は、呼吸筋の麻痺や疲労を示し、生命維持が極めて困難な状態です。
  • 喘鳴は、気道の閉塞や狭窄を示し、早急な対応が必要となる場合があります。

付き添い中に呼吸の変化に気づいたら、すぐに医療スタッフに報告し、適切な処置を受けましょう。

2-3.呼吸の変化に気づいた時の対応:落ち着いて観察し、医療機関へ連絡

呼吸の変化に気づいた時は、まず落ち着いて患者さんの状態を観察しましょう。呼吸の速さ、深さ、リズム、音などを注意深く観察し、変化を記録しておくと、医療スタッフへの報告に役立ちます。呼吸が苦しそうであれば、体を楽な姿勢に整えたり、衣服を緩めたりすることも有効です。速やかに医療機関に連絡し、指示を仰ぎましょう。

3.意識レベルの低下:呼びかけへの反応は?

3-1.意識レベルの段階:清明、昏睡、せん妄など

意識レベルは、患者さんの状態を把握する上で重要な指標です。意識レベルは、一般的に以下の段階に分けられます。

  • 清明:意識がはっきりしており、自分の名前や場所、時間などが正確に答えられる状態。
  • 傾眠:刺激を与えると一時的に意識が戻るが、すぐに眠ってしまう状態。
  • 昏迷:強い刺激(痛みなど)を与えると、わずかに反応する状態。
  • 昏睡:刺激を与えても全く反応しない状態。
  • せん妄:意識が混濁し、興奮したり、幻覚を見たりする状態。

3-2.意識レベル低下時の観察ポイント:目や口の動き、表情の変化

意識レベルが低下している場合、以下の点を観察しましょう。

  • :目を開けているか、閉じているか。視線の動きはあるか。光に対する反応はあるか。
  • :口を動かしているか。何か言葉を発しているか。表情はどうか。
  • 表情:苦悶の表情はないか。痛みを感じているような表情はないか。

これらの状態がみられた時は、医療スタッフに正確に伝えるようにしましょう。

3-3.意識がない時の声かけ:安心感を与える言葉を選ぼう

意識がない状態でも、患者さんは周囲の音や声を感じている可能性があります。安心感を与える言葉を選び、優しく話しかけましょう。「大丈夫だよ」「そばにいるよ」「つらくない?」「ありがとう」など、穏やかな言葉で語りかけることが大切です。思い出話や好きな音楽を聴かせるのも良いでしょう。

4.血圧の変動:高血圧・低血圧、それぞれの意味

4-1.血圧の変動パターン:急激な上昇、下降、乱高下

危篤時には、血圧が不安定になり、急激に上昇したり、下降したり、乱高下したりすることがあります。血圧の変動は、心臓や血管の状態、体内の水分バランス、自律神経の機能など、様々な要因によって引き起こされます。

4-2.血圧の変動が示す体の状態

血圧の変動は、体の状態を示す重要なサインです。

  • 急激な血圧上昇:脳卒中、心不全、腎不全などが疑われます。
  • 急激な血圧低下:ショック状態、脱水、出血などが疑われます。
  • 血圧の乱高下:自律神経の機能不全、感染症などが疑われます。

4-3.血圧低下時の対応:保温、医療機関への相談

血圧が低下している場合は、体を温めることが大切です。毛布をかけたり、湯たんぽを使ったりして、体を温めましょう。ただし、熱すぎるものを使用すると、低温やけどの危険性があるため、注意が必要です。血圧低下が続く場合は、速やかに医療機関に相談し、適切な処置を受けてください。

5.その他の危篤サイン:顔色、体温、排泄の変化

5-1.顔色の変化:蒼白、チアノーゼ(紫色)

顔色の変化も、危篤状態を示すサインの一つです。

  • 蒼白:血行不良や貧血が原因で、顔色が青白くなる状態。
  • チアノーゼ:血液中の酸素が不足し、顔色や唇、爪などが紫色になる状態。呼吸不全や心不全が疑われます。

5-2.体温の変化:高体温、低体温

体温の異常も、危篤状態を示すことがあります。

  • 高体温:感染症や炎症などが原因で、体温が異常に上昇する状態。
  • 低体温:体温調節機能の低下やショック状態が原因で、体温が異常に低下する状態。

5-3.排泄の変化:失禁、排尿・排便の停止

排泄の変化も、体の状態を反映します。

  • 失禁:意識レベルの低下や排泄機能の麻痺などが原因で、尿や便をコントロールできなくなる状態。
  • 排尿・排便の停止:腎機能の低下や腸閉塞などが原因で、尿や便が出なくなる状態。

6.危篤状態になったら:家族ができること、心構え

6-1.医療チームとの連携:病状説明、治療方針の確認

危篤状態になったら、医療チームと密接に連携を取り、病状の説明や治療方針について十分に確認しましょう。わからないことや不安なことがあれば、遠慮せずに質問することが大切です。

6-2.家族間での情報共有:冷静な話し合い、役割分担

家族間で情報を共有し、冷静に話し合いましょう。誰が病院に付き添うか、誰が親戚に連絡するかなど、役割分担を決めておくことも重要です。

6-3.精神的なサポート:寄り添い、感謝の言葉を伝えよう

患者さんに寄り添い、精神的なサポートを心がけましょう。手を握ったり、体をさすったり、優しく声をかけたりすることで、安心感を与えることができます。感謝の言葉や愛情を伝え、心穏やかに過ごせるようにサポートしましょう。

7.最期の時を迎えるにあたって:後悔しないために

7-1.エンディングノートの活用:希望の整理、伝えたいことの記録

もしご自身のことを考えるなら、エンディングノートを活用して、自分の希望を整理したり、家族に伝えたいことを記録したりすることも有効です。葬儀の形式、財産の分配、大切な人へのメッセージなどを書き残しておくことで、家族の負担を軽減することができます。

7-2.緩和ケアの選択肢:苦痛の緩和、QOLの維持

緩和ケアは、病気の進行に伴う苦痛を和らげ、QOL(生活の質)を維持するための医療です。痛みのコントロール、呼吸困難の緩和、精神的なケアなど、様々な方法があります。緩和ケアチームと相談し、患者さんに最適なケアを選択しましょう。

7-3.大切な人との時間:思い出を語り合い、心穏やかに過ごす

最期の時を迎えるにあたって、大切な人との時間を大切にしましょう。思い出を語り合ったり、好きな音楽を聴いたり、静かに寄り添ったりすることで、心穏やかに過ごすことができます。後悔しないように、伝えたいことを伝え、感謝の気持ちを伝えましょう。